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日中友好新聞

2009年7月15日号1面
真実を語り継ぐ
DVD「泥にまみれた靴で」改訂版とブックレット発売
企画・制作・発行=日本中国友好協会

 平和への思いを証言に託して「これが最期の証言」との思い

 

写真1

DVD「泥にまみれた靴で」

 改定版26分、定価3,150円(本体3,000円)

 

写真2

ブックレット「泥にまみれた靴で」

 A5版・64頁。定価420円(本体400円)。ブックレットの内容=制作者からのひとこと、DVD再現、用語解説、証言者紹介、関連地図・年表、寄せられた感想・活用体験など。
 

真実を明らかにする証言

 

 「『ええい、こうやって殺すんだ』と言って私は…、赤ちゃんの…胸を、胸の上に…、醜く、泥でまみれた靴で…踏み殺しました」(元特務機関員・湯口知正さん証言)。
 DVD「泥にまみれた靴で」では、5人の元日本兵が、自らが手を下した捕虜の惨殺、拷問、生体解剖などの加害体験を証言しています。
 この証言によって、人間が人間でなくなった侵略戦争の真実が明らかにされ、戦争を二度と繰り返してはならないとの証言者の訴えは、多くの人びとの心を揺さぶってきました。
 そして、体験者が相次いで亡くなり、加害体験を聞く機会が減少するなかで、このDVDは注目を集め、2007年8月の普及開始から約1000枚が普及され、教育現場や、「九条の会」などの取り組みのなかで活用が広がっています。

 

軽視できない田母神問題

 

 2008年10月に、「我が国が侵略国家だったなどというのは正に濡れ衣」と主張した論文が明らかになり、事実上更迭された田母神俊雄前航空幕僚長は、その後も執筆・講演活動を旺盛に展開し、侵略戦争を正当化する発言を全国各地で行なっています。また、南京虐殺の事実を否定する映画「南京の真実」の上映なども、全国各地で展開され、国民各層に影響を広げています。
 このような侵略戦争を正当化する動きの強まりのなかで、DVDの上映普及活動をより幅広い層へと広げていくことが期待されています。
 そして、DVDの制作から2年を経た7月7日(盧溝橋事件72周年記念日)、イラク戦争などの情勢の変化を反映させたDVD改訂版と、そのDVDの内容を分かりやすく解説したブックレットが発売されました。

 

「沈黙する」学生たち

 

 神戸女学院大学の石川康宏教授は、DVD「泥にまみれた靴で」の活用経験を次のように語っています。
 「映像は、もっぱら授業で活用しています。もともとビデオの3部作を使っていましたが、あまり時間にゆとりのない場合には短いDVDを活用しています。学生たちの直接の反応は、『沈黙する』というものです。映像を見せる前に戦争について自由に討論をしていくと、靖国史観の影響も受け、いろいろな意見が出てきます。しかし、その後にDVDを見せると『沈黙する』のです。その内実は、『戦争の是非の問題は、生半可な知識で、軽々しく議論して良いことではないのだ』『本当に、しっかりと、よく学んだうえで語るべきことなのだ』という自覚が得られるということです。それは、史実を誠実に学ぶ、スタートラインをつくるものになっています」
 他の大学や高校の教員からも同様の感想や経験が寄せられており、これらの声は、侵略戦争正当化の主張が若い世代に影響を広げていること、そして、DVD「泥にまみれた靴で」が、この若い世代の誤った考えを正す内容と力をもっていることを教えてくれています。

 

忘れている残虐行為

 

写真3
湯浅謙さん

 1991年のビデオ「証言―侵略戦争」の制作から18年、この間に加害体験者の多くが亡くなりました。DVD「泥にまみれた靴で」の5人の証言者のうち、今も健在で証言を続けているのは、湯浅謙さん(93歳)1人となりました。陸軍軍医として生体解剖を行なった湯浅さんがこのDVDにかける思いには、特別のものがあります。
 「私たちにとって戦争は『日常生活』でした。人を殺すことは『あたりまえ』の行為で、罪の意識は一切ありません。多くの人が戦争に参加していながら自分の体験を語らない。それは、隠しているのではなく、ほとんどの体験者が自らの残虐行為を、罪の意識を抱くことなく忘れているのです。私はいつも、これが最期の証言になるかもしれないとの思いで話しています。残念ですが、証言を聞くこともなく戦争のことを分かったつもりになっている人も多いのです。このDVD『泥にまみれた靴で』には戦争の実態、本質が凝縮されています。若い人たちに戦争の恐ろしさを実感をもって知ってほしい。このDVDを見てほしいと切に願います」
 湯浅さんの思いを受け継ごうとする、戦後生まれの若い世代による湯浅さんの加害体験の聞き取り作業は、今も続けられています。

 

憲法九条を守り続けて

 

写真4
湯浅さんを囲んでの体験の聞き取り

 人間性を失い「鬼」となった痛苦の体験から反戦平和への揺るぎない思いを抱き、身を削るようにして証言を続けてきた体験者たち。「なぜ憲法九条を、平和憲法を歪めてしまうかというと、戦争をするためですよ」(元憲兵・土屋芳雄さん証言)。DVD「泥にまみれた靴で」には、憲法九条を守り続けてほしいと願う体験者たちの、次の世代への強い期待が込められています。
 「憲法九条」改悪に向けての道筋をつけた「国民投票法」の施行まであと1年。DVD「泥にまみれた靴で」の役割はますます大きくなっています。(Y)

 

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