日中友好新聞
2009年6月15日号1面
今こそ帰国者二世への支援を
兵庫の「支援する会」が取り組む
協会兵庫県連合会事務局長 上田雅美
中国「残留日本人孤児」への新支援策が各地で実施されるなかで、帰国者二世に対する支援の必要性が高まっています。この問題を重視した活動が兵庫県で始まっています。
医療・介護分野での就労めざす
ホームヘルパー体験者(奥)から真剣に学ぶ学習会参加者
中国「残留日本人孤児」を支援する兵庫の会の活動は3年目に入りました。会がいま取り組んでいる重要な活動の一つに、帰国者二世への支援があります。
昨年3月から「中国残留日本人孤児の尊厳を守る兵庫の会」とともに兵庫県や県下の自治体に対し、支援相談員に二世を登用することを要請し、尼崎市・明石市・伊丹市・宝塚市で実現しています。
また帰国者一世の老後への備えと二世の就労のため、医療・介護分野への進出をめざし支援を始めています。
今年3月から13人の二世女性がホームヘルパー2級の資格取得に挑戦しています。多額の受講料は「中国残留孤児援護基金」と交渉し80%の補助が出ることになりました。
今年6月には受講者全員が資格取得の見込みです。その後新たに二世10人以上が受講を希望しています。
支援する会はヘルパー体験者を招いて話を聞く機会をつくるなどアドバイスに努め、彼らの学習を援助しています。
尼崎市の医療法人社団・秀和会「野村病院」は、支援する会メンバーの働きかけに応じ、今年3月から二世女性・石原梨花さんを医療相談員として採用し、病院の窓口で支援通訳、受付と電話相談員として位置づけています。
二世、三世の実態調査を
昨年3月に「二世の会」が約20人で発足。粘り強く討議を重ねた結果、医療介護という、一世、二世共通の課題が見つかりました。
今年5月の総会で@二世相互の情報交換、共有化、連携の強化A支援相談員・支援通訳の取り組みを強化B翻訳・通訳活動の促進C残留邦人(一世)の医療・介護と、二世の就労、などの活動方針を決め、「中国残留日本人兵庫県二世の会」として活動を続けています。
経済状態が厳しい不況下、兵庫県では、就労可能な二世でも仕事が見つからず、生活保護を受けざるを得ない人も出ています。
日本語の不自由な二世、三世の家庭では、子ども(三世、四世)と十分な意思疎通ができず、習慣や言葉の違いから子どもの通学している学校の教師や他の保護者、また周辺地域住民とのトラブルが生じるケースもあります。
二世、三世の将来を考えると、日本語学習や就労支援はますます重要な課題となっており、二世、三世とその家族の生活と就労の正確な実態調査が必要とされています。「支援する会」は二世の会の相談役として支援を行い、調査実現をめざしています。
支援組織の努力が重要に
兵庫県の「二世の会」としても、可能な地域から、これらの現状把握に取り組むことを当面の課題としています。
全国の支援交流センターや多くのボランティア組織が行う日本語教室や各種交流会などではできないことを、地域住民の協力・支援で実現させ、帰国者が「日本へ帰ってきて良かった」と心から思える状況をつくるには、「支援する兵庫の会」などの支援組織や、日本中国友好協会の今後のさらなる努力にかかっているといえます。
日本国民としての誇りもちたい
中国残留日本人兵庫県二世の会
副代表 有馬久美子
私は1988年、19歳の時に「残留孤児」だった父と一緒に帰国しましたが、日本語が分からず仕事に就けなかったり、生活保護を受けるなかで、役所から「自立」を促され、両親と別居せざるを得なくなるなど、つらい思いをしました。
現在、私は「帰国者支援相談員」の仕事をしています。
二世の方の、失業の悩みをたくさん聞いています。二世たちは、日本国籍をもっているのに、日本人と見られず、経済不況のなかで、まっ先に解雇の対象にされてしまいます。
「支援する会」の協力でヘルパーの資格取得に取り組んでいますが、ヘルパーの仕事は男性にはできない。日本はまだまだ男性社会で、やはり男性が仕事をできないと、家庭を支えることができません。
今後、「二世の会」の活動で、二世、三世の実態調査と、地域との交流をはかりたいと思います。帰国者は今まで日本社会のなかで隔離されてきましたが、地域の人びととお互いのいいところ見せ合えば、きっと分かり合えると思います。
これまで、「私はいったいなに人?」と思わされてきたけれど、これからずっと暮らしていく日本の国民として、誇りをもって、日本や地域社会に貢献したいのです。
だから、自分たちが行動しなければいけないし、きっと私たちに何かができると信じています。