日中友好新聞
2008年10月25日号1面
あいつぐ違法な人権侵害
中国人研修生問題解決の道は
高度な技術、技能を身につけるために来日した外国人研修生が、劣悪な条件と環境で働かされる事例があいついでいます。外国人研修生の総数は07年に9万人を超え(法務省『出入国管理統計年報』による)、その約7割が中国人です。こうした人びとの人間性の回復、権利の擁護のために闘っている首都圏移住労働者ユニオン(全労連加盟)に、その実態と問題解決の方向を聞きました。
死亡・失踪(しっそう)など事件が多発
左から、首都圏移住労働者ユニオンの田波紀夫副委員長、川崎俊二委員長、本多ミヨ子書記長
今年9月7日、石川県金沢市の海岸で27歳の中国人研修生(男性)の溺死体が発見されました。この男性を含め、4月以降の4カ月ですでに9人の中国人研修生・実習生が過労などで死亡しています。
財団法人国際研修協力機構(JITCO)の統計によると、02年〜06年までの5年間に失踪した外国人研修生・実習生は7281人に上ります。06年の失踪者1635人のうち中国人は1076人と65・8%を占めています。
06年に千葉県で発生した「木更津事件」では、8万元(約120万円)を借金して保証金を納め、黒龍江省チチハルから来日した崔紅義さんが、約束と違う不当な賃金や労働条件を不服として受け入れ団体の千葉県農業協会に研修先変更を求めたところ、協会側から強制帰国させられそうになり、「帰国すれば多大な借金が残る」と抵抗して農業協会の理事を刺殺。崔さんは懲役17年の判決を受け服役しており、市民による支援運動が続いています。
人間性無視と劣悪な労働環境
「こうした問題の背景には『安い賃金で人を長時間働かせる』という『利益最優先主義』があります」。同ユニオンの川崎俊二委員長はこう話します。
「日本政府や大企業が研修生対策を野放しにしているという、構造的な問題です。木更津事件は最も悲惨な例ですが、時給300〜400円、ピーク時には1部屋に13人のたこ部屋での生活を強いられるなど、(小林多喜二の)『蟹工船』のような劣悪な環境で働かされている例は枚挙にいとまがありません」
研修生にも労基法の適用を
「労働基準法がきちんと適用されれば多くの問題は解決します。厚生労働大臣が労基法適用の通達を出して徹底すれば大きく改善されますが、今のところ、そうなっていません。07年の閣議で見直しが検討されましたが、私たちはこの実現のために全国のどこかで突破口を作りたいのです」と、川崎さんは言葉を強めます。
全国労働組合総連合(全労連)はこの問題を重視し、「外国人労働者問題連絡会」を設置。07年12月には「全国交流集会」を開き、取り組みが次第に全国各地に広がっています。すでに愛媛などで日本中国友好協会の支部が支援し問題を解決した例もあります(別掲)。
「少子化で国内の労働力が不足するなかで、外国人労働者は今後ますます増加し、いずれ日本の労働体系全体を揺るがす問題になります。報道されるようになったとはいえ、まだまだ知られていない。世論喚起のためには、労働組合や日本中国友好協会など団体の活動が重要です」と、川崎さんは強調しました。
(お)
外国人研修制度とは
「日本が技術移転により開発途上国における人材育成に貢献すること」(財団法人国際研修協力機構のホームページ)を目的とし、18歳以上の外国人を研修生として受け入れる制度。
1960年代から、外国に進出している企業が現地労働者の研修を日本国内で行う「企業単独型」の形態で行われてきたが、1990年に日本政府が制度を改定し、企業団体(商工会、事業協同組合など)を通して、幅広い業種の中小企業が研修生を受け入れることを可能にした「団体監理型」の形態が認められた。
特に後者の形態で、本来の目的である国際貢献ではなく、低賃金労働力確保のためにこの制度を利用するケースが増加。パスポートの取り上げ、脱走防止策としての研修手当ての強制貯金、「保証金・違約金」を盾にした身柄拘束、時間外の長時間労働、権利主張に対する強制帰国など、違法な人権侵害が相ついでいる。
現状では、研修生は制度上「労働者」として扱われないため、労働基準法が適用されない(「技能実習生」は1年の研修を終えた研修生がさらにその技能を発展させるための制度で、「労働者」と同じ扱いとなる)。 |