日中友好新聞
2008年2月25日号1面
詩吟を日中友好の架け橋に
李白終焉の地
馬鞍山市とさかんな交流
詩吟を歌い舞う中国安徽省吟道会の人たち(日本吟道学院の大会で)
詩人李白の名を知る人は多いが、終焉の地、中国安徽省馬鞍山市に「李白墓苑」があることを知る人は少ないのではないだろうか。その馬鞍山市と「詩吟」を通して友好交流を深めている人びとがいる。
破壊され、修復された「李白墓苑」
盧溝橋事件(1937年)を機に中国全土に戦禍を拡大した日本軍は、同年12月馬鞍山市当涂県に侵攻し砲火を浴びせた。そのため1100余年もの歴史をもつ「李白墓苑」も破壊された。
1992年、李白にちなんで馬鞍山市で開催された「吟詩節」に参加した日本吟道学院(東京都文京区)の渡邉吟神第2代総裁(故人)は、墓苑の石碑に刻んであった「太白祠毀于日本軍国主義的砲火之中…」の文字に心衝(つ)かれ、愛好者を中心に「墓苑再建」を呼びかけ、墓苑は市政府の支援のもと、1998年に修復し再建された。これを機に、日中詩吟交流が大きく広がった。
詩吟は「世界平和」めざすもの
日本吟道学院は1980年に設立され、全国各地に150の認可団体(会員1万人余)をもつ社団法人。第5代総裁の浪口宗神氏(写真)は「戦時下では、詩吟は国威発揚のために利用された歴史があり、そういうイメージをもつ人もいますが、本来は世界平和と家族や友人知人の絆を深め、人格形成にも役立てることを目的にしています。吟じられる詩も、漢詩をはじめ短歌、俳句、自由詩、散文など心の世界を謳(うた)った古典や平和、友情を題材にしたものが多い」と説明。
また、「現在は趣味として楽しむ人が多く、大きな声を出し息長く吟ずることは健康にもいい。医者の折り紙つきです」と語る。詩吟人口は高齢化しているが、吟道学院は幼少年向けの教本「未来の星たちへ」を発行し、「幼い時から名作にふれ、詩を吟じよう」と呼びかけている。
11月に「日中伝統文化交流のつどい」
詩吟は漢字の本場中国でも盛んだ。2001年に揚子江河畔の李白記念館で開かれた「李白生誕1300周年吟詩節」には国内外から6000人が参加、日本からも300人が合流した。中国の詩吟愛好家と日本吟道学院との交流は17年になる。
今年は日中平和友好条約締結30周年を記念して11月23日(祭日)に「2008 日中伝統文化交流のつどい」を開催、中国からは京劇俳優、民謡歌手、水墨画家、馬頭琴演奏家などが来日、日本の代表と共演する。詩吟の普及で日中友好の輪がさらに広がることが期待できそうだ。(お)
李白…701年(長安元年)から慈寺似年(宝応元年)に活躍した中国の唐時代の詩人。字は太白。飄々(ひょうひょう)とした詩風から「詩仙」と呼ばれる。杜甫とともに中国の代表的詩人。著作に『李太白詩集』がある。