日中友好新聞
2007年11月5日号1面
笑い声生き生きと“楽しい生活講座”
中国帰国者のよりどころに―
注目あつめる「支援する兵庫の会」の活動
楽しみながら日本語を学習する帰国者たち
(宗景正氏撮影)
いま開かれている臨時国会で「中国帰国者支援法」の成立が期待されています。「中国『残留日本人孤児』を支援する兵庫の会」は、裁判勝利・法案成立後も展望して「中国帰国者と日常的に交流できる活動を」と早くから多彩な活動に取り組んできました。その中心となっているのが“楽しい生活講座”です。中国帰国者のよりどころとなって、帰国者と支援する人びとの交流が深まっています。
「神戸勝利判決」で支援の輪広がる
06年12月の神戸地裁の画期的勝利判決を機に、それまで主として協会兵庫県連を中心にした活動から各方面に大きく広がっていきました。
「中国『残留日本人孤児』を支援する兵庫の会」(代表=浅野慎一神戸大学教授)は今年1月に結成され、いまでは会員は450人になりました。
「支援する兵庫の会」は結成時に、裁判支援、帰国者の体験紹介、帰国者との日常交流の3つの活動方針を決め、特に「日常交流の活発化」に力を入れてきました。
なかでも“中国帰国者のための楽しい生活講座”は反響が大きく、県下に広く知られるようになりました。
日本の習慣や日本語を覚えやすく
“楽しい生活講座”の発足は、「孤独な生活を送っている帰国者が、教室へ出かけ、日本の生活習慣や日本語を楽しく身につけることはできないだろうか」という話がきっかけでした。
この提案は、帰国者自身はもとより、スタッフ・ボランティアの人びとからも歓迎され、いまでは月2回定期開催、毎回帰国者とその家族が多数参加、帰国者は平均25人。30人を超えたこともあります。ボランティアも、それぞれの得手を生かし毎回平均10人は参加しています。
交流の中味は多彩。折り紙講習、軽い健康体操、日本の童謡をみんなで歌います。またゴミの出し方や緊急時の避難方法などもプリントや絵で理解しやすいように伝えています。教えるほうも習うほうも楽しさ一杯、笑い声が絶えません。
こうした対話と交流を通じて、帰国者は次第に日頃よく使う日本語を覚えるようになります。毎回参加している帰国者の下平朋好さん(74歳)は「支援する会や同じ立場の人に会えて、いろんな話ができて、とてもうれしい」と話し、講座が生活の一部となっています。
講座には、尼崎や伊丹、明石など交通費のかかる帰国者もいます。「支援する会」では毎回合計約3万円かかる交通費を、会費と募金などでまかない、全額渡しています。
マスコミも注目、「協会カレンダー」を紹介
地元のマスコミは、これまでも「孤児問題」報道に協力的でしたが、“楽しい生活講座”にも注目し、「孤児支援」をうたった協会制作のカレンダー「中国 悠久の旅」を毎日新聞阪神支局、NHK神戸支局、神戸新聞が紹介、すでに70部以上の注文がありました。
「支援する兵庫の会」ではこのほかに、帰国者を中心に「出前餃座」、朗読劇「わたしたち何人(なにじん)ですか」の上演、「親睦交流会」などに積極的に参加し、各地域の住民との交流を広げています。
開拓団帰還者の多い小野市大開町の運動会に招かれたり、「大兵庫開拓団」の郷・豊岡市や南但馬の出石町観光ツアーなども企画しています。
写真家で「残留孤児写真展」を関西で開催し、スタッフの一人でもある宗景正さんは「帰国者が日本で生活するうえで、日本語や生活習慣を身につけることは欠くことのできない重要なことです。日常生活を送る場で接する人びとに帰国者の現状を理解してもらうことがますます大切な活動となっています」と話し、「法制化したあとの活動が一層重要です」と力を込めました。
(上田雅美・日中友好協会兵庫県連合会事務局長)