日中友好新聞
2007年9月15日号1面
日本政府は謝罪と賠償を!
中国元「慰安婦」の肉声
中国人「慰安婦」裁判を支援する会の安達洋子さんと再会を喜ぶ陳林桃さん(右)(提供:川村千恵子さん)
日本政府による「慰安婦」問題への対応が世界で大きな非難をあびています。中国人「慰安婦」裁判を支援する会(西野瑠美子代表)のメンバーの安達洋子さん、日中友好協会東京都連の徳永淳子さんら4人は8月16日から20日まで、中国山西省太原市の北東にある盂県の羊泉村、西煙鎮、秋子峪を訪れ、裁判の原告である元「慰安婦」のおばあさんらと再会。日本政府に対する訴えなどに耳を傾けました。
80歳の老婦が切々と訴え
7月2日に発表された中国人元「慰安婦」被害事実調査委員会の第一段階の調査報告によると、山西省、雲南省、海南省、遼寧省、吉林省などで調査を実施。今回の調査で氏名が明らかになった「慰安婦」の数は338人。日本軍医の身体検査を経て河南、山東、唐山、天津などに駐留していた日本軍部隊に送られ、性奴隷にされていたといいます。
1942年から44年にかけて山西省盂県進圭村に駐屯した日本兵も、周辺の村から少女や女性たちを駐屯地に連行、ヤオトン(窯洞=黄土層の崖に掘った洞穴式住居)に監禁したうえ、性暴力を繰り返しました。
当時被害に遭い、裁判の原告となっている女性たちのほとんどが身体的後遺症のほか、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を抱えています。周喜香さん(82歳)は拷問、監禁、強姦で手足が不自由に。体がたえず震える状態が続いています。
陳林桃さん(84歳)は21歳のときに夫が八路軍の兵士だったことで連行され、被害を受けました。今でも当時を思い出すと胸が苦しくなったり、夢にうなされます。
李秀梅さん(80歳)は15歳で5カ月間暴行を受けました。抵抗した際に皮ベルトのバックルが右目に当たり失明。現在も頭痛などに悩まされています。
彼女たちの家を一軒ずつ訪ねた安達洋子さんは「おばあさんたちは病気がちで生活も苦しい。ここまで問題を放置した日本政府に憤りを感じます」と語ります。
今後も証言活動続ける
郭喜翠さん(80歳)はいいます。「日本政府は事実を認めたにもかかわらず、謝罪も賠償もしないのは納得できません」
劉面換さん(80歳)は「全世界で『慰安婦』問題の関心が高まっているのに謝罪も賠償もしない日本政府の態度は信頼を失います。最高裁の判決にも怒りを感じています。秋にはカナダへ行って証言する予定です。私は最後まで闘います」と語りました。
日中両国の弁護団の取り組み
4月27日の最高裁の敗訴判決を受け、弁護団長の大森典子さんは「最高裁は中国人被害者が日本の裁判所に訴え出る権能はなくなったとして敗訴させましたが、原審判決が認定した事実を確認し、請求権そのものが消滅したわけではないとし、政治的解決を促しています。私たちはさらに運動を続ける決意を固めました」と意欲的に語ります。
7月31日には他の「慰安婦」裁判の弁護団と「慰安婦」問題の最終解決を求める要望書を内閣総理大臣あてに提出するなど、活発な活動を続けています。
中国人弁護士の康健さんは4月末の判決後、原告とともに北京の日本大使館へ訴えを行なったばかり。「日本政府が歴史の事実に真摯に向き合わなければ、日本に明るい未来はない。これまでの誤った態度を早期に改めるよう期待し注目している」といいます。
世界中で謝罪を求める動き
アメリカ議会下院は7月30日の本会議で太平洋・アジア戦争中の日本軍の「慰安婦」問題について日本政府に明確な謝罪を求める決議を採択しました。
この間、国連の人権委員会や、国際労働機関(ILO)の日本政府に対する厳しい勧告、南北朝鮮はじめ中国、日本、台湾、フィリピン、インドネシアなどのアジアの女性たちが、女性国際戦犯法廷などを通して世論を高めてきました。
その一方で安倍首相の「強制連行の証拠はない」発言や、一部の国会議員や評論家らの意見広告などが国際世論の猛烈な反発を引き起こしています。
日本政府が過去の侵略戦争に対する反省をふまえ、「慰安婦」問題に誠意をもって対応することは、アジア諸国との友好を発展させるうえで欠かせない課題です。事実を真摯に受けとめ、謝罪と賠償を行うべき時に直面しています。(押)