青海チベット鉄道は、昨年7月、青海省ゴルムド〜ラサ間1142キロが開通し営業運転を開始。そのうち960キロが海抜4000メートル以上の場所で、最高地点では5000メートルを越えます。
気密車両、酸素吸入器を備えた最新の設備と、車窓からチベットの美しい風景を楽しむことができることから、中国国内でも人気が沸騰。予約の取りづらい状況が続いています。
車内は快適、ラサ着後に注意を
協会神奈川県連合会役員の高瀬和夫さん(中小企業診断士)は、6月7日に北京西駅発のT27次列車に乗車し、ラサへの鉄道旅行を体験しました。
「各座席に酸素吸入器があって、ビニール管を使って吸入します。私は酸素を吸わなくても大丈夫でした。食堂車の食事もまあまあで、車内は快適でした」と語ります。
しかし、ラサ到着後、宿泊したホテルで身体に変調が。深夜2時頃、息苦しさで目が覚めました。「夜遅いし、どうしよう」と戸惑いましたが、幸い、宿泊した部屋の中で酸素吸入器を探し当て、酸素を吸ったところ症状が治まりました。
「チェックイン時、酸素吸入器のことはホテル側から知らされなかった。酸素や医師のことなどは、最初に確認しておいた方がよいですね。ラサは海抜3658メートルと、富士山の頂上より少し低い程度。宿泊、観光の間は注意が必要です」と高瀬さん。
理想は事前の「高所順応」
登山家たちは、高層の山を登る場合、事前にゆっくりと時間をかけて高所順応を行なっています。
海外での豊富な登山経験をもつ日本勤労者山岳連盟理事・山行登山部長の香取純さんはこう話します。
「日本を出発する前に富士山で体を慣らし、現地でも登っては下りてを繰り返しながら、少しずつ高度を上げていきます。慣れるにはある程度の活動も必要なので、滞在中も腹式呼吸をしながら歩きます。この時は、息を吸うより吐く方に意識をもっていったほうがやりやすいです」
また、前述のラサのホテルでの出来事のように、睡眠中は呼吸が浅くなるので注意が必要とも。
「高度障害には頭痛、めまい、吐き気、眠気などいろいろありますが、実際にどんな症状が出るかは、個人差があります。また、そうした症状を一度体験し克服しないことには、順応はできません。一番いいのは、高所で自分の体にどのような症状が現れるかを知っておくことです。富士山に登るのは大変でしょうから、例えば都内や各地にある『低酸素室』を利用してみてはいかがでしょうか」と香取さんはアドバイスしてくれました。
列車の旅は魅力そのもの
6月6日から15日まで、「野口信彦さんと行くチベット鉄道10日間の旅」(本紙3月5日号で紹介)に参加した石川元也さん(弁護士・協会大阪府連会員)は、高所順応を兼ねて、バスで青海湖(海抜3200メートル)などを観光し、ゴルムドからラサ行きの列車に乗車。一緒になったチベット族の乗客と歌や踊りで楽しく交流し、「人懐っこいチベットの人たちと交流でき、元気をもらえた」と旅の思い出を語ります。
高瀬和夫さんは、「車窓からは、カモシカ、羊などの野生動物、平原を走るトラックや農民を見かけました。雪をかぶった美しい山々など、変化に富んだ景色を楽しむことができました」と車窓の素晴らしさを話します。
出発前に体調を整え、自身の症状に気をつければ、チベットへの鉄道旅行はきっと魅力あふれる旅となるでしょう。
(Z)
延べ130万人が利用
6月28日発新華社電によると、青海チベット鉄道は昨年7月1日の正式営業開始いらい今年5月末までに延べ130万人余りの旅客を輸送しました。
同鉄道は毎日4往復の列車が運行され、約5000人の内外観光客がチベットと中国各地を行き来しています。
6月21日付人民日報によると、チベット自治区の住民1人当たり域内総生産(GDP)は、昨年1万396元(1元は約16円)に達し、初めて1万元を突破しました。
農牧民1人当たり純収入は昨年2435元で、4年連続2ケタ増を記録しました(昨年の全国農村住民1人当たり純収入平均は、3587元)。
昨年チベットを訪れた内外観光客は、延べ251万2100人、うち海外観光客は延べ15万4800人にのぼりました。
高山病の予防法
(チベット自治区旅行局のパンフレットから)
(1)高原に入ったばかりの時は、暴飲暴食、タバコと酒を控え、野菜や果物などビタミンが豊富なものを多くとる。
(2)急に歩いたり走ったりせず、休憩を多くとり、まめに水分補給をする。
(3)風邪は高原肺水腫(肺に水がたまる重篤な症状)を誘発するので、衣服を調整し風邪の予防につとめる。
(4)自分に心理的負担を加えないようにする。
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