輝くような美しい音色とその余韻が響き合い、東洋にも西洋にも通ずるような情緒を感じさせる楽器、「揚(ヤン)琴(チン)」。その歴史と奏法、魅力について、日本をはじめ世界で活躍する揚琴奏者、張(チャン)林(リン)さんに聞きました。(文と写真=編集部・佐藤勝)
中東から発祥、400年前に中国へ
揚琴は板の上に張った弦を、両手に持った竹の棒で叩いて演奏する打弦楽器。発祥はペルシャ(イラン)といわれています。
「中国には約400年前の明代に伝来して、最初に広東で演劇などの伴奏として使われ始めました。例えば琵琶は1000年近くの歴史がありますから、揚琴は中国でも歴史の浅い楽器です。揚琴のための曲ができたのはここ100年くらい。最近は独奏の演奏家も現れてきていますが、やはり基本は合奏です」と張林さんは語ります。
現在の中国では、二胡などの伴奏のほか、楽団の中央でコンサートマスターの役割をつとめています。幅広い音階と明るい音域で演奏に厚みをもたらす、「縁の下の力持ち」です。
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揚琴を演奏する張林さん
演奏に使う竹の棒と、たくさんの弦が張られた揚琴。
右側が低音、左に行くほど高音になる |