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日中友好新聞

2007年3月5日号1面

(民族楽器「揚琴」の魅力)
世界とつながる可能性

〜揚琴奏者・張林さんに聞く〜

 輝くような美しい音色とその余韻が響き合い、東洋にも西洋にも通ずるような情緒を感じさせる楽器、「揚(ヤン)琴(チン)」。その歴史と奏法、魅力について、日本をはじめ世界で活躍する揚琴奏者、張(チャン)林(リン)さんに聞きました。(文と写真=編集部・佐藤勝)

中東から発祥、400年前に中国へ

 揚琴は板の上に張った弦を、両手に持った竹の棒で叩いて演奏する打弦楽器。発祥はペルシャ(イラン)といわれています。
 「中国には約400年前の明代に伝来して、最初に広東で演劇などの伴奏として使われ始めました。例えば琵琶は1000年近くの歴史がありますから、揚琴は中国でも歴史の浅い楽器です。揚琴のための曲ができたのはここ100年くらい。最近は独奏の演奏家も現れてきていますが、やはり基本は合奏です」と張林さんは語ります。
 現在の中国では、二胡などの伴奏のほか、楽団の中央でコンサートマスターの役割をつとめています。幅広い音階と明るい音域で演奏に厚みをもたらす、「縁の下の力持ち」です。

揚琴を演奏する張林さん


演奏に使う竹の棒と、たくさんの弦が張られた揚琴。
  右側が低音、左に行くほど高音になる

 130本もの弦を叩き分ける

 演奏するときは、竹の棒の先についたゴムの部分を弦に当てます。両手で同時に叩いて和音を出す、右手で低音の伴奏をしながら左手でメロディを鳴らす、両手で弦を連打してトレモロの効果を出すなど、さまざまな表現方法があります。
 「叩き方で音色そのものも大きく変化します。現在も楽器自体が進化し、新しい奏法が開発されています」。
 張林さんの手ほどきで、演奏を体験させてもらいました。楽器の前に座ると、まず弦の多さに圧倒されます。弦はなんと約130本で、音域は4オクターブ。一つの音階に対して複数の弦を割り当て、音量と音色の厚みを増しています。
 1人前になるにはどのくらいの練習量が?
 「半年から1年の練習で、曲を演奏できるようになりますよ」と張林さん。
 実際に叩いてみると、きれいな単音が出せる当てどころは見た目よりずっと狭く、しっかりとした基礎練習が必要だと感じられました。

 遠くの国々とつながっていく

 5歳から揚琴を習い、「外の世界を見たい」との思いから日本に留学、東洋と西洋の音楽を比較研究しながら演奏活動を行ってきた張林さんは、揚琴の魅力を「世界への広がり」といいます。
 「中国風の音階を鳴らせば『ああ、中国の楽器だ』とわかるわけですが、そうしなければどこの楽器か分からない。そこが面白い」と張林さんは笑います。
 「西欧のダルシマーやツィンバロンなどは揚琴と同じルーツですし、白系ロシア人の楽器でも同じようなものがあります。アイルランドやイタリア、ハンガリーにも。そして日本には琴という楽器がある。これはシルクロード以上の広がりです。私が揚琴で中国の曲を演奏すると、日本のお客さんからは『なつかしい。聴いたことがないのに、つながりを感じる』とよく言われるのです。私も外に出るまで分からなかったのですが、世界のどこにでも存在している楽器だった」
 異国の地とつながる楽器――揚琴が、世界各地の音楽家や聴衆を出会わせ、交流をもたらす可能性が想起されます。日本で活動する揚琴奏者は張林さんを含めてまだ数人ですが、彼らの活躍と揚琴の魅力はますます注目を集めそうです。

☆CD情報 「弦外之音」…ALM RECORDS
☆張林さんの出演予定…「周耀?[金+昆]二胡コンサート」…4月22日(日)、東京都庭園美術館新館大ホール(JR「目黒」駅から7分)で午後2時開演、前売り4500円、当日5000円。
出演=周耀?[金+昆](二胡)、張林(揚琴)姜小青(古箏)
◎上記CD、コンサートならびに張林揚琴教室についてのお問い合わせは
TEL&FAX:03-3428-0600 携帯:090-8771-3150中国音楽勉強会(安藤)まで


張林(チャン・リン)

 河南省洛陽生まれ。5歳から揚琴を学ぶ。中央音楽学院を経て1987年、中央歌舞団に入団し揚琴首席奏者に就任。89年、東京学芸大学大学院に入学し、在学中から演奏活動。93年ソロアルバム「中国の美音/揚琴」を発表、「ステレオマガジン誌」年間最優秀録音特別賞を受賞。その後もアメリカ大陸や日本で演奏活動を行う。現在は東京を拠点に活動。



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