5月28日、全人代で香港の「国家安全法制」(以下「安全法」)が採択されました。同法では香港での国家分裂行動、政府転覆、外国勢力の関与、さらに組織的テロ活動などが禁止されることとなっています。昨年行われた逃亡犯引渡し条例に反対する抗議行動を、中国政府は外国勢力の関与による不法な組織的テロ行為、国家分裂活動と見なし、安全法が不可欠としていますが、国際世論は強く反発しています。さらに中国の国家安全当局が香港に配置されて監視活動を行うことなどが安全法に盛り込まれたことなどから、香港では激しい抗議行動が繰り返される事態に至っています。
植民地香港を平和的に、繁栄を維持しつつ返還させるため、中国はイギリスとの協定で「1国2制度」「資本主義50年不変」を世界に約束しました。1997年の返還式典にはアメリカを含む世界各国が招待され、香港の繁栄を共に慶祝しました。この歴史的事業を成功させ、その後経済大国となった中国がこの約束を守るのかどうかを世界中が注目しています。仮にも「1国2制度」が崩壊すれば、香港の繁栄と香港市民の将来だけでなく、中国に対する世界の信頼は奪われることになるでしょう。
返還時には香港独立や革命を主張する勢力は皆無でしたが、残念ながら返還からの20年余りの間に香港市民の不安や反発が強まり、現在は香港を脱出する市民も増え、全人代決定が実行されればその数が急増することが懸念される事態となっています。あらゆる暴力に反対する立場に立つ者として、昨年の主催者発表100万人の平和的な抗議行動、区議選等で示された市民の感情に配慮し、冷静に市民との対立を回避し、基本法と「1国2制度」の原則を厳守することこそが香港の繁栄維持に向けての唯一の解決策と考えます。
香港基本法では「1国2制度」の原則の下で、集会、結社、デモなどの自由が保障されていますが、死文化してしまうことを香港市民は恐れています。中国は多くの国際人権条約の批准国として人権規約を順守する義務があることは言うまでもありません。
いまや香港の将来は香港市民だけのものではありません。「1国2制度」の破綻は中国本土と香港両市民間の信頼の醸成を妨げ、日本における反中感情をさらに高めることを強く懸念します。国際紛争の平和的な話し合いによる解決を主張してきた中国が、平和を願う大国としての責任を果たすことを心から願い、力ではない平和的な話し合いによって事態が打開されることを強く求めるものです。
2020年6月16日
日本中国友好協会
理事長 田中 義教
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