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HOME > 日中友好新聞 > 2018年2月25日号

日中友好新聞

競争しても戦争しない
トランプ政権に中国は
どう向き合うか
末浪靖司


shinbun
トランプ大統領の国家安全保障戦略提出を伝える北京青年報(昨年12月20日付)




 米トランプ政権は昨年12月18日、国家安全保障戦略を、今年1月19日には国防総省が国家防衛戦略を発表しました。日本の新聞には「米、中国への対抗鮮明」(朝日)、「対中強硬に重点」(読売)などと報じられ、米中が戦争しかねないような雰囲気です。
 では、中国はトランプ政権にどう向き合おうとしているのでしょうか。


 トランプ政権の国家安全保障戦略は、米国に対抗する勢力として、①米国の利益に挑戦する中国とロシアの「修正主義国家」②米国に脅威を及ぼすイランと北朝鮮の「ならず者国家」③米国に危害を加えている「聖戦主義テロリスト」―の3つをあげています。
 中国については、急速な経済発展を背景に世界中に進出し米国の利益や影響力に挑戦しているとしています。「修正主義」というのは米国と同じ利潤追求型経済だが、自由・民主主義ではないという意味です。
 昨年来、北朝鮮の核開発が大問題になり、米朝が戦争するかのように言われましたが、「戦略」では「北朝鮮はアメリカ人を殺害する能力を追求している」とさらりと書いて、むしろイランに重点を置いています。

大国間の協調進める

shinbun
トランプ大統領訪中で「中米協力がまさに新時代を開く」
と報じた法制日報(昨年11月11日付)

 米国家安全保障戦略に対して中国外務省の華春瑩(か しゅん えい)報道官は「大国間の協調・協力を発展させる」「米中関係の健全な発展を維持する」とコメントしました。
 人民日報社発行の環球時報も、「ワシントンは中国の台頭を受け入れ難いだろうが、そうした感情は米国社会を代表していない。両国は世界最大の貿易相手国だ」と、米中協調を強調しました。
 実際、昨年11月にはトランプ大統領が訪中、その後も習近平主席と頻繁に電話会談するなど緊密な関係が続いています。
 南シナ海では中国が軍事基地を造り、米艦が付近を航行するなど緊張が伝えられますが、双方が軍事衝突にならないよう行動しています。
 国家安全保障戦略も、中国との関係を「競争」と言い、脅威を強調しているわけではありません。
 国家防衛戦略発表の際、マティス国防長官は「ここ数年のテロリズムとの闘争から中国・ロシアとの対抗に安全保障の重点を移す」と述べました。シリアでIS(イスラム国)を壊滅させ、これからは中国・ロシアだとも読めますが、そう単純ではありません。
 米国が9・11同時テロ(2001年)後に始めたアフガニスタン戦争は、米国史上最長の戦争になり、トランプ政権は増派を繰り返しています。ニジェールで昨年10月に米兵が殺害されたように、北アフリカでは現地武装勢力との戦争を強めています。
 これが「聖戦主義テロリスト」との戦争の実態です。

米中は安定力と表明

shinbun
「米国は核のない世界への関心をなくした」と
報じた人民日報海外版(1月17日付)

 中国は米国家防衛戦略に対し、地球的利益を守るコストは高くつくが、米中が「安定力だ」として協力を呼びかけました。
 マティス国防長官も近く訪中して北朝鮮問題での米中協力や軍事交流拡大を協議する予定で米中協力進展も予想されます。
 中国は対テロ戦争には参加していませんが、批判もしません。国連PKO(平和維持活動)には積極的に軍隊を送り、犠牲者も出しています。

国際情勢に強くなろう

 日本では、米中が対立し緊張しているような報道があふれ、日本も中国に対抗して軍備を増やす必要があると思う人もいるでしょうが、現実は違っています。
 中国との友好・平和のためには、国際情勢とくに米中関係や中国外交を知ることが大事になっているようです。 

(ジャーナリスト)



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