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HOME > 日中友好新聞 > 2017年6月15日号

日中友好新聞

待ったなしの課題
高齢化がピークへ
中国帰国者の介護問題
小林悦夫


 

shinbun

寝たきりの帰国者の介護をする訪問ヘルパー
(写真提供=公益財団法人「中国残留孤児援護基金」)



 全国各地で高齢化した中国帰国者の介護問題が深刻化しています。現在、中国からの永住帰国者は6718人(家族を含めた総数は2万898人)(厚生労働省平成29年4月末現在)で、これらの人びとは、すでに70歳を超えています。
 公益財団法人「中国残留孤児援護基金」の小林悦夫事務局長に中国帰国者たちが直面している介護の現状や、それに伴う諸問題について執筆していただきました。     (編集部)



 日本に永住帰国した中国残留邦人のうち終戦時に乳幼児であった「残留孤児」のほとんどは中高年になってから帰国したため、日本語や日本の生活習慣を身につけることが難しく、帰国後の半生を葛藤の中で過ごしてきました。



shinbun
小林悦夫事務局長

生活の各分野で困難が
 就職、子どもの教育、親族や身元引受人、隣近所との付き合い、医療機関の利用、公共機関での諸手続等々、生活のあらゆる領域で言葉や文化の違いに起因するさまざまな問題が生じてきました。
 そして、人生の終着段階に至り、介護を受けるに際しても言葉等の障害により十分に適切なサービスを受けられないという問題が起きています。
 運良く施設に入所できたとしても、施設のスタッフや他の入所者と意思疎通ができず孤立化し、認知症等の症状がかえって進んでしまった、あるいは、孤立に耐えきれず退所してしまったという例。
 訪問介護サービスを利用しても訪問ヘルパーとの間に意思疎通ができずトラブルになった、断られた、やめてしまった、等々の例。
 介護サービスを利用できない状態が続けば二世やその配偶者が親の面倒を見るために仕事を辞めざるを得なくなり、自身の生活が困難に直面することにもつながりかねません。



介護事業は経営難に

「中国残留孤児援護基金」は中国帰国者を主な対象者とする介護事業所の立ち上げ、および、その後の運営を支援するために支援金を支給してきました。 また、二世三世および、その配偶者が介護員資格を取得することを支援するために各種講座受講料の援助を行なってきています。
 さらに、一昨年2月には、中国語で訪問介護サービスを提供する「訪問介護ステーション寿星(じゅ せい)」を開業しました。
 訪問介護事業所は、総じて経営が厳しいために介護員の待遇改善が進まず、そのために人が集まらず、という負の連鎖から廃業に追い込まれる事業者が続出している状態ですが、中国帰国者向けに中国語で訪問介護サービスを提供しようとする場合、この介護員不足と経営難は一層深刻です。
 中国帰国者が最も多く暮らしている東京は、二世三世など中国語ができる介護員の数が帰国者人口との比率で最低に近い地域でもあります。これは恐らく東京が他の地域よりも二世三世の就職状況が良好なため、条件の悪い介護員のなり手が少なくなってしまっているためかと考えられます。
 中国帰国者の高齢化は、まさにこれからピークを迎えることになり、帰国者の介護難民化を防ぐ手立てを講ずるに待ったなしの状況ですが、なかなか解決策が見つからない厳しい情勢にあることもまた事実です。


(公益財団法人「中国残留孤児援護基金」事務局長)





永住帰国者数の内訳
中国外務省、「慰安婦」問題で
 厚生労働省のデータによると中国からの永住帰国者6718人のうち「残留孤児」は2556人(家族を含めた総数9377人)、「残留婦人」は4162人(同じく1万1521人)。帰国世帯数は「孤児」2552世帯、「婦人」6714世帯となっています。





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