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HOME > 日中友好新聞 > 2015年10月5日号

日中友好新聞


苦境も成長も続く中国経済
現実をリアルに見よう

 

 

shinbun
「全体として安定した経済の基本は
変わらない」と報じる人民日報
(9月7日付)

世界を震撼させる中国?


  リーマンショック(08年)以後の金融緩和が世界を一巡し、各地でさまざまなバブル現象を生み出し、そこからの出口戦略の時期を迎えている。このなかで起こった中国の株式バブル崩壊、成長減速化は世界を震撼させた。
 中国の経済規模は、日本の2・17倍(14年、IMF統計)で世界2位、貿易は世界1位で大多数の国・地域の最大の貿易パートナーであり、過去8年間は世界経済成長の最大の牽引車であった。
 この中国の成長減速化は、世界経済の動向を左右する。
 とりわけ対中輸出依存度が高い国や中国需要が高い比率を占める国際商品市場(鉄鉱石、原油、大豆など)への影響は重大・深刻である。
 とはいえ、日・米・欧の株式市場の大波乱は中国発とか、経済危機の震源地は中国、という議論は事実に即さず、根拠がない。

 


対中認識の危うさ

 


 まして中国崩壊論、中国経済低迷論は、日本社会に蔓延する、事実を見ようとしない大勢順応、情緒的思考の産物であろう。日本の対中世論は世界でも突出して悪くなり、世界から懸念あるいは奇異視されている。
 この結果が、日本の訪中者の過去5年間の100万人強の減少や中国語学習者の減少であろう。

 

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ビニールハウスで作物を収穫する河北省の農民(9月6日付人民日報)

 


減速の主要因は国内事情


 中国でも成長減速化の理由を先進国の経済低迷に求める見解があるが、多数派見解ではない(中国の近年の世界経済見通しは、概して楽観的過ぎる傾向にある)。
 国際要因は成長下押し要因であるが、11年以後の中国経済減速化の主要因は国内事情にある。中国では、あと数年間経済苦境が続くことは、この1、2年来、常識化されている(①質と効率を軸とする中高速成長への転換期②経済構造調整の陣痛期③前政権期の負の遺産の消化期という、「三期重畳」論が主流)。
 なお、来年からの次期5カ年計画期の潜在的成長力の推計は中国の専門家の間でも6・2~8%に分布している。IMFは6%台の成長を想定し、中国の多数派は6・5%前後を想定している。

 


繁栄に向かうアジア


 中国では21世紀最初の10年までの2桁成長の時代は終わり、6~8%成長がノーマルな時代を迎えたという自己認識(「新常態」論)は妥当である。
 それでも世界最高グループの高成長であり、中国が世界経済成長の最大の牽引車である時代が続くとみて間違いない。
 アジア地域は世界の最たる高成長地域であり、中国と周辺諸国の経済関係は拡大の一方といってよい。
 例えば中国とASEAN諸国の貿易は11年から日中貿易額を上回り、その差は広がるばかり。韓国は13年から中国の最大の輸入元になり、日本はずっと維持してきた地位を譲り渡してしまったなど。

 


日中両国の「共損関係」


 ここ数年の日中経済関係は例外的である。この3年ほどの大幅な円安もあり、ドル表示での日中貿易は12年から減少している。日本の対中直接投資も13年から減少・低迷状態にある。日中間には、「共損構造」が出現したのである。
 ASEAN、韓国、ドイツなど中国の成長を自国に取り込めた国もあれば、そうでない国もある。政治力の差による。日本は後者である。中国側も日本の経済力・技術力を取り込み損なっている。もともと2国間関係は一方が適切に対応すれば悪化することは稀である。日中双方に責任がある。

 


求められるアジア戦略


 ともあれ、日本は近い将来に日本の7~8倍の経済規模をもつ隣国が出現する事態、繁栄に向かうアジア諸国にどう対応していくか戦略的方針をもつ必要がある。
 アメリカ追随で、中国牽制の軍事的対応や受身的対応に終始する安倍外交は破産し、未来がない。中国は独立・非同盟の国である。主人もちの日本は、外交面で初めから歩が悪いことを自覚する必要がある。
 21世紀半ばには先進国にキャッチアップする構想と戦略を中国は着々と練り上げている(改革全面深化方針、「中国製造2025」、「一帯一路」戦略、アジアインフラ投資銀行設立など)。地域別・産業別の成長格差など、中国は直ちに解決はできない問題を山ほど抱えているが、その自己革新能力を過小評価すべきではなかろう。

 

 


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