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日中友好新聞

2011年12月15日号1面
雲南省の自然環境守る取り組み
植物の保全で日中友好を!
中国科学院昆明植物研究所 魯元学さんに聞く

 中国雲南省の自然環境を守るために中国と日本で活発な活動を続けている中国科学院昆明植物研究所の魯元学さんに、雲南の自然環境と問題点、この分野の日中協力の課題、少数民族の文化などについて執筆していただきました。(編集部)

 

雲南の自然環境と問題点

 

写真1 日本中国友好協会

魯元学氏のプロフィール
 1968年3月雲南省生まれ。93年7月雲南師範大学生命科学院に進学。
 現在、中国科学院昆明植物研究所高級実験師。2000年から10年、富山県中央植物園との共同研究を経て、11年7月から国際交流を兼ねた植物遺伝・育種に関わる共同研究で千葉大学に滞在。「雲南花紀行」を日本で出版、共著と論文多数。

 雲南省は中国の南西部に位置し、北回帰線が南部を横断しています。総面積は日本列島を上回る39.4万平方キロで、中国の総面積の4.1%を占めています。
 雲南省は中国では地理的に特殊な省であり、昔から中国と東南アジアとの通用口です。雲南の地形は複雑、気候は多様、地上地下の資源は非常に豊富で、“植物王国”、“動物王国”、“非鉄金属王国”、“漢方薬の故郷”等と称されます。
 雲南省には標高6000メートル以上の高山から76.4メートルの熱帯地域まであり、熱帯、亜熱帯、温帯、寒帯、雪山氷原など、ほとんどの気候帯があります。気候帯に応じて、熱帯ではコーヒーやゴム、バナナが栽培され、亜熱帯、温帯ではユーカリやアカシアなどの造林が生物多様性を脅かしています。
 そのため、複合型の生態系をもつ農・林業の建設が望ましいです。
 中国の「西部大開発」、「東部が西部へ支援」の政策は、“民族文化の省”、“旅行資源の省”、“生物資源(生物多様性)の省”としての雲南省に大きな影響を与え、深い意味があります。しかし、自然資源の保全と地域の経済発展の間に矛盾が起きていて、バランスの調整と問題の解決が期待されています。

 

生物資源保護が課題

 

写真2 日本中国友好協会
雲南少数民族チベット族の村

 地球の温暖化、砂漠化、生物多様性の低下など世界的問題に伴う環境意識・健康志向の高まりのなか、漢方薬やサプリメントの材料として、薬用植物の需要は観賞植物の需要より急速に高まっています。
 原料の大半は、野山に自生している薬用植物を採取して得るため、需要の増加に伴い、地域によっては、薬用植物が乱獲され、資源が枯渇しつつあります。
 雲南地方の生物資源の保全・育成・活用、作物から産物への利用、特産品をもつ山村・農村・都市などで生物産業を創成していくことがますます期待されています。

 

25の少数民族、豊かな文化

 

写真3 日本中国友好協会
彝(イ)族の姉妹

 雲南省全体には、25の少数民族と漢族とを合わせて26民族がいます。25の少数民族は、歴史、生活場所、生活環境が違うため、多様な社会・文化形態と民族風俗をもち、豊かな民族文化を構成しています。
 日本と中国は同じ日華植物区系にあり、東北端に日本が位置し、南西端に雲南があります。日本と雲南省には共通した植物が分布しています。この2つの場所の農耕、文化、風習、伝統を概観すると、共通点がみられます。
 例えば、日本で言う照葉樹林文化は雲南省につながります。その他、雲南少数民族には独特な植物文化、具体的には植物の儀礼文化、花食文化、樹葉の経書、薬草文化、宗教的行為(例えば植物のトーテム=祖先・兄弟・姉妹たる血縁の意、神林の崇拝など)があります。
 雲南に住んでいる少数民族は、生物資源の管理や利用において豊富な経験と伝統的な知識をもっています。これらの伝統的な知識は、生物医学、人類文学など、さまざまな面に大きく貢献しています。
 今後、日本と共通する文化や雲南少数民族の独特な文化を保護・発展させるには、原住民が中心となって国や自治体、団体と協力していく必要があります。そのためには雲南少数民族の人材育成は重要な課題です。
 そして、日本と中国の友好交流・共同協力をさらに続けていくべきだと思います。

 

日本の研究者と共同研究進む

 

写真4 日本中国友好協会
椿は彝(イ)族が崇拝する植物の一つ

 われわれの中国科学院昆明植物研究所では、多様な植物(観賞植物、薬用植物、絶滅危惧植物等)の生育環境を調査し、生態を解明し、植物多様性の保全について研究を行なっています。
 「人と自然の共生社会の実現」という目標のもと、食料・環境・健康・バイオマスエネルギーといった全人類的課題の解決を視野にいれ、自然・社会のあり様を学びながら、幅広い研究に取り組んでいます。
 今まで、富山県中央植物園・千葉大学・岡山大学・大阪府立大学・総合地球環境学研究所(京都)・東京農業大学等の研究機関の先生方と創造性豊かな研究を進めています。
 特に、われわれの昆明植物研究所と富山県中央植物園とは、雲南省の貴重な植物の保全をテーマに10年間の共同研究を行なってきました。
 10年にわたり日中両国の植物研究機関が共同研究した例は他にないと言えます。その中で、大勢の研究者が行き来し、研究交流ができています。

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