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日中友好新聞

2011年4月15日号1面
格差是正、生活向上へ本格始動
全人代と政協
新5ヵ年計画など決定
 井出啓二(長崎大学名誉教授)

 今年3月初・中旬開催の両会(全国人民代表大会、人民政治協商会議)は年度計画だけでなく、21世紀3回目の5ヵ年計画を審議・採択しました。「民生・収入・インフレ」が大会のキーワード。
 会期中に日本で3・11大地震が発生し、それは中国の原発政策の修正につながりました。

 

経済発展方式を転換

 

写真1 日中友好協会

分科会の会議で発言する
全人代の代表
(人民日報3月8日付)

 経済を計画的に運営している中国では、5ヵ年計画は約1年半かけて練り上げられます。その骨格はすでに昨年10月に明らかにされていますが、その段階では数値目標は示されていません。
 したがって、今大会の注目点は、具体的数値目標の発表、昨年10月以降の各部門・地域での論議にもとづく補充・修正点に集まります。
 第12次5ヵ年計画の基本方針は、@質と効率向上に依拠した経済発展方式に転換する、A経済成長率と住民所得の向上および賃金と労働生産性の上昇を同テンポとする、B格差是正、民生向上、幸福度の向上です。
 新5ヵ年計画では成長率を7%と低めに設定し、次のような数値目標を掲げています。
◆サービス産業や都市化率を4ポイント高める ◆研究開発費をGDP比2.2%に高める ◆公的住宅の比重を20%前後とする ◆都市部就業者を4500万人増やす ◆非化石エネルギーの比重を11.4%へ ◆単位当たりのエネルギーおよび二酸化炭素排出量をそれぞれ16%、17%削減する ◆平均寿命が1歳延び74.5歳となる。
 今年度は8%成長、インフレを4%前後に止めるとしています。

 

「近代化」猛追の勢い

 

写真2 日中友好協会
会議に参加した女性代表委員
(人民日報3月8日付)

 昨年10月の5中総当時、および今次大会期間中に私は福建省に滞在しており、帰国して日本での論評を読みました。日本のマスコミはさすがに中国報道は詳しいと改めて思いました。
 ただ日本の報道は、中国政治における民主主義の欠如、軍事的脅威の報道に偏する嫌いがあります。言論の自由度は大違いですが、ワンパターンの支配的見解しか書かないという点では、中国のマスコミと日本やアメリカのマスコミは五十歩百歩です。
 ともあれ、@中国でも自由と民主主義は拡大方向にある、A中国は先進国と異なり長期の高成長過程(過去10年でGDPは5倍近くになりました)にある、B10年後には日本の数倍、アメリカを抜き世界一の経済大国になる可能性が大である等々、要するに中国は共同富裕社会への歩みを本気で着実に進めて、政治・経済・社会の近代化において猛追していることは正当に評価しておかなければなりません。
 外部から見れば、@基本的人権、自由と民主主義の保障の遅れ、A環境問題への取り組みの弱さ、アメリカと並ぶ軍事力増強の姿勢の2点は今後中国が克服すべき主要課題です。

 

インフレ抑制は難関

 

 全人代での温家宝首相報告では巨大な成果と同時に広範にわたる問題点が列挙されています。しかし、党・政府・企業幹部の汚職の根絶を可能にする方策はなお打ち出されていないなど、画期的方針はありません。
 今年の最重要課題であるインフレ抑制、そして長期の懸案である住宅バブル規制も難題です。
 私見では、新5ヵ年計画の目玉である経済発展方式の転換は今の中国にとり、最大の難関です。というのは、大多数の省・市の新5ヵ年計画は2桁成長あるいは倍増の成長目標を打ち出しており、相変わらず量的成長に走っているからです。
 陣地戦、持久戦となるほかないでしょうが、行方が注目されます。

 

日中関係改善の展望

 

 最後に日中関係ですが、昨年日中貿易は歴史上最高を更新しました。しかし政治関係は両国政府の後ろ向き対応から紆余曲折が続いています。
 双方が、悪しきナショナリズムを抑え、ともに軍縮を一歩ずつ進めていく以外に関係改善の展望を拓いていくことはできないと考えています。

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