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日中友好新聞

2009年8月5日号1面
抑制された意志に貫かれた反戦映画「南京!南京!」
石子順

 現在、映画「南京!南京!」が中国で上映され、話題となっています。映画評論家の石子順さんにこの映画の見どころなどを解説してもらいます。(編集部)

 

 陸川監督の「南京!南京!」を見た。迫力と真実味にあふれた反戦映画だ。痛みに全身、貫かれる痛恨歌だ。監督は相手を醜怪に描くことは中国人自身への侮辱になるといい、南京事件を映画で公正客観的に描くという姿勢を見せてきた。

 

修羅場のなかに人間性を

 

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『大衆電影』2009年9月号

 1937年12月、無人の南京に侵入してきた日本兵が、教会の扉を開けると、ぎっしり老人、女、子どもがいる。後には兵士も。その1人、1人が両手をあげる。父の背中の女の子まで手をあげる。悲劇の予感で緊迫感がじりじり高まる。
 視点が独特。この映画は日本兵の視野から描くのだ。そのスタイルは冷静できびしく、白黒画面でドキュメンタリータッチ。市街戦をすさまじく描くが、虐殺シーンは抑制している。焼殺、機銃掃射、生き埋めなど息をのむが、ショッキングさや残酷さを出さない。感情的でなく理性的で節度を重んじている。中国側と日本側、その心理と行動、人物描写がともに行き届いている。
 修羅場のなかに人間性をにじませる。戦って捕らわれる中国兵士に「山の郵便配達」の劉Y、家族の安全を考える小心者に「胡同愛歌」の範偉が扮し安全区の女性群像が悲痛だ。2人の日本兵を対照的にとらえ良心と悪魔の葛藤、ありふれた人間が狂気に走る姿を追う。だが日本兵によって釈放される子どもや生まれてくるものが死の街・南京の生命を印象づけて希望を忘れない。

 

戦争の残酷さを知ってほしい

 

 「ココシリ」のダイナミックな演出旋風で日本でも知れわたった陸川監督。「中日両国人民の恨みを挑発するのではなく、映画によって歴史のよごれを清め、真相に迫って民族間の憎悪に雪どけをもたらし、両国人民の間に橋をかけたい。若い世代には歴史の真実、戦争の残酷を知ってもらいたい」と言う。
 日本兵役に、中泉英雄と木幡竜が扮している。角川役の中泉は「角川の視線は観客の視線だ」と監督にいつも言われてきた。「この映画は参加したすべての人が一緒になって創ったものです。大勢の人に見てもらいたい」。伊田隊長役の木幡は「日本ではいっぱいの人がこの映画を受け入れてくれると思う。私もその中の1人です」と言った。
 この映画は中国建国60周年映画の重点映画10本のうちの1本に推薦された。制作費は、8000万元(約11億円)かけたが、4月22日に全国で公開されて、1カ月足らずで22億円の興収があった。中国と日本の俳優の共演は、中国から見た戦争と日本から見た戦争の2つの角度が必要だと思ったからだと、監督が説明した。

 

敵は“鬼”だけではない

 

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「中国電影報」
2009年4月23日号

 中国内のさまざまな評価のなかで、清華大学新聞メディア学院の尹鴻副院長は「敵は鬼≠セけではない」というタイトルの作品評が「虐殺」にふみこんで注目される。
 「長期にわたって、われわれは民族の恨みによって人間性と反人間性、人道と反人道との、民衆と支配者との深い価値観の対立を覆い隠してきた」と指摘し、「中国人が中国人を殺してきた数量は少ないといえるのか? 歴史上の虐殺物語と南京大虐殺とどんな違いがあるのか? 近代の南京でいえば、太平天国から曽国藩までどれだけの無辜の人が非命に倒れたか?」と問いかける。
 「従って『南京!南京!』の意義は日本の鬼への恨みを喚起するだけでなく、一切の反人道、反人間性行為への告発と警戒を呼び起こさせるところにある。われわれは南京大虐殺を記憶するだけでなく、われわれもわれわれ自身の歴史上のそれと同様のこの世で最大の悲惨な虐殺を記憶しておかなくてはならない(以下略)」(「中国電影報」09年16号)と強調している。
 日本による南京大虐殺から中国史上における大虐殺を思い起こしていくべきであるという、この大胆な問題提起が、映画「南京!南京!」をきっかけに発表されたことにもこの映画の果たした役割の大きさをうかがえる。陸川監督が全力をあげて完成させたこの映画に、われわれも真摯に向き合って、日本でなんとか公開させたいものだ。(映画評論家)

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