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日中友好新聞

2009年3月25日号1面
国際金融危機への具体策しめす
中国全人代
菊池敏也

 中国全人代が北京で3月5日から13日まで行われました。中国研究者の菊池敏也さんに今回の全人代の特徴、問題点、課題などについて執筆してもらいました。(編集部)

 

 今年の中国全人代(第11期全国人民代表大会第2回会議)は、米国に端を発した国際金融危機が中国にも大きな影響を及ぼすなかで開かれました。
米国などへの輸出を担ってきた中国沿海部の工場が生産停止や倒産に追い込まれ、働き口を失った農村からの出稼ぎ労働者は推計で2000万人に達しています。

 

昨年とは違う8%目標の意味

 

写真
庶民の暮らしは(北京)

 中国は昨年、四川大地震や国際金融危機のなかでも、国内総生産(GDP)が30兆元(1元=約14・5円)に達し、1人当たりのGDPも3000ドル(1ドル=約100円)を超えました。中国はすでに米国、日本に次ぐ世界第三の経済体。昨年、9%の成長率を保ち、世界の経済成長の20%が中国によるものといわれています。
 国際金融危機に対して中国がどんな具体策を打ち出すのか、今回の全人代は国際的な注目を集めました。温家宝首相の政府活動報告は、中国が「危機」「困難」に直面していることを率直に認めるとともに、包括的な対策をとり、これを克服する「自信」も示しました。
 今年も8%前後の成長率を提起しましたが、その意味合いは昨年とは異なります。昨年は、この数字は経済の過熱を防ぐための目標でした。しかし、今年は、国際金融危機のなかで何としても確保すべき目標として提起しました。

 

農村中心に内需拡大へ

 

 昨年11月、中国政府は2年間で4兆元規模の内需拡大策を発表しました。今回、示された具体的な「包括的計画」では、政府の強力な財政出動を通じて内需を刺激する一方、企業・国民の税負担を5000億元減らしました。このため、今年の予算は、9500億元の赤字予算となりました。
 内需の拡大では、とくに国民の消費需要の拡大を重視しています。そのために農村向けの予算、教育や医療などの予算が大幅に増えています。
 庶民の生活を支え、社会保障を拡充することを通じて、内需拡大を促すという考え方は評価されてよいでしょう。
 他方、巨額の資金が投入されるため、役人の汚職・腐敗にも目を光らせなければなりません。また、環境保護や省エネの課題がとくに重要です。
 中国は第11次5カ年計画(2006年〜10年)で、単位生産あたりのエネルギー消費量を20%削減する目標をもっていますが、昨年は約4・59%下がり、この3年間で10・08%減少しました。今後も経済建設と生態環境保護という2つの課題の両立をめざすことになります。

 

途上国重視の国際経済制度を

 

 対外関係では、国際金融危機が世界各国の実体経済を大きく損なう中で、中国は各国と共同して危機の拡大を食い止め、国際金融システムの改革を進める方針を明らかにしました。
 カジノ経済を招いた先進国中心の国際経済システムを改める課題では、今後、中国や他の新興国、発展途上国の役割と主張が注目をあびることになるでしょう。
 今回の全人代では、経済問題が焦点となりましたが、政治体制改革では「積極的かつ穏当に推進」する方針が確認されました。国民の政治参加を促し、政府の活動を監督するうえでは、政治面でも積極的な制度づくりを進めることが求められています。
(中国研究者)

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