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日中友好新聞

2009年2月25日号1面
中国はどう打開する?
世界的経済危機問題
井手啓二

 戦後最大の世界経済不況の中国への影響、中国の役割、中国の世界不況対策が関心を集めています。この3点につき私見を述べます。

 

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農村部の経済は(四川省)

世界経済支える役割

 

 07年夏以降の世界経済不況は中国にも負の影響があります。しかし中国経済はなお高度成長期にあり、日・米・欧とは様相が異なります。
 中国経済の高成長は今後も持続すると思います。03年から07年まで中国は2桁成長を記録しました。08年も暫定数字で9%の成長です。09年も8%前後の成長は確実でしょう。したがって世界経済を支える中国の役割・寄与度は高まります。
 中国経済は、08年10月以降成長率が急低下しています。07年の13%成長からみれば、10〜12月期の6・8%成長は急落です。この急低落がどこまで世界不況によるものかは議論の余地があります。
 というのは、9月まで中国はバブル・景気過熱を警戒し、景気抑制策を続けていたからです。政策のミスマッチによる急低落と見た方が妥当でしょう。中国政府の認識と政策転換は10月以降開始され、矢継ぎ早に内需拡大を軸とする対策が開始されました。11月の4兆元(1元は約13円)の財政支出方針が最たるものです。

 

過大な外需依存の危うさ

 

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国際経済の衰退は経済領域から社会領域にまで拡散していると報じる『瞭望』(09年第1号1月5日付)

 世界不況の中国への影響は、輸出不振を通じるものが最大で、ついで対中直接投資と国際経済変動に弱い香港・台湾経済を通しての負の影響です。中国と東アジア諸国の輸出は米・欧・日への依存が高く、これが直撃されています。
 先進国向け輸出が多い広東、浙江、江蘇省の多数の輸出産業・企業は倒産・閉鎖に追い込まれ、すでに2000万人以上の農民工が帰郷を余儀なくされています。世界不況は、2・2億人の農民工と2500万人前後の新規学卒者に重くのしかかります。
 中国の特殊事情は、高成長の持続の中でも14%前後の失業者がおり、貧富の格差が大きく、社会的セーフティネットが未整備のため、失業者増・生活苦は容易に社会不安・騒動を引き起こします。
 このため政府は低成長に神経質にならざるをえず、社会は上から下まで全力をあげて不況対策に邁進(まいしん)します。中国は、四川地震の際にもみられたように高い危機対処能力をもっています。
 今回の世界不況は、GDPの34%に達する外需依存の危うさを明白にしました。西部大開発、内需(とくに消費)拡大への転換はこの10年来叫ばれてきましたが、容易に進みませんでした。

 

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故郷に帰る民工たちの思いを特集した『半月談』08年第23号

内需拡大策に転換へ

 

 今回は、内需拡大への転換を余儀なくされますので大きなチャンスです。貯蓄が投資を大幅に上回り、消費がGDPの50%前後と低いのはむしろ異常であり、弱点でした。中国の強味は、不況下でも賃金・生活水準抑制を必要としないことです。
 また世界不況は、技術・資源獲得目的の中国企業の海外進出や外国人雇用にとり大きなチャンスであり、現に08年の中国の対外直接投資は、金融投資を除いても406・5億ドルとなり、日本のそれと遜色ないところにきています。中国はすでに2兆ドルに近い世界一の外貨準備高、米国債の最大の保有国であるなど、余力は十分です。

 

8%成長と民生重視

 

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地方都市の経済は(四川省)

 8%成長堅持、9字方針(保増長、拡内需、調結構)、民生重視などと特徴づけられる09年の基本方針は、08年12月の中央経済工作会議で決定されました。例年より1週間ほど会議開催が遅れたのは、開催に先立ち不況対策の各種会議がもたれたためでした。
 3月開催の恒例の全人代にむけて1月から各省・地域の全人代で今年度計画が練られています。近く、対策の全貌が明らかになるでしょう。
 私は、劣悪化する環境問題、そして貧富の格差拡大の歯止め、浪費の典型である軍事費支出削減、民生改善の画期的方針の打ち出しを期待します。(福州大学客員教授)

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