日中友好協会(日本中国友好協会)

日本中国友好協会
〒101-0065
東京都千代田区西神田2-4-1 東方学会ビル3F
Tel:03(3234)4700
Fax:03(3234)4703

HOME > 日中友好新聞 > 2008年11月25日号

日中友好新聞

2008年11月25日号1面
互いに等身大で見る努力を
中国製の食品問題
太田光雄

 中国製の食品問題で日本と中国で被害が続出、両国で深刻な社会問題となっています。長年中国貿易に関わってきた経営コンサルタントの太田光雄さんに輸入食品の問題点、日本の輸入業者や現地日系企業のあり方について執筆してもらいました。(編集部)

 

写真
中国の食品工場の様子

 今年は、中国食品の重大事件が続いた。河北省天洋食品が製造した毒餃子。三鹿集団などが中国国内で販売したミルクへのメラミン混入。その余波で、日本でも輸入加工食品からメラミンが出て、製品回収が相次いだ。
 中国食品の安全性にかかわる事件が起きると、日本のメディアは、“中国悪し!”の報道で終始しがちだ。これでは問題は解決しない。

 

メリットの反面デメリットも

 

 中国からの輸入食品の多くは、価格が安いことでビジネスが成り立っている。廉価な中国食品は、労賃が安い、土地代が安い、電気代が安い等々の結果だ。米国のように高い生産効率で競争力が生まれることもある。だが、中国のそれは、中国が発展途上国経済にあることに起因している。
 廉価なことはメリットだ。しかし、中国食品にはデメリットもある。発展途上の中国と成熟した日本とでは、同じ安全度であるはずがない。社会事象や精神文化面での日中の時差は総じて30〜50年もある。安全度も同じだ。私はこれを“時代差”と呼んでいる。“法令完備”などは100年以上の差だ。
 農薬の管理レベルは、日本の昭和20年代から30年代にかけてと酷似。メラミン混入も、ひょっとして昔、日本では露見しなかっただけかも知れない。
 “時代差”以外にも、中国と日本では社会体制が違う(体制差)、労働文化が違う(労働文化差)、精神文化が違う(精神文化差)、気候が違う(気候差)など、さまざまな違いがある。

 

異文化ギャップ埋める必要が

 

 両国の文化の違いは、ビジネスではリスクとなって現れる。価格が安いだけで、単に契約して輸入するだけなら、その国や地域での衛生観念、農薬環境、金儲け主義や労資問題から生じるリスクも、商品に付いたままで来てしまうのは当然だ。

写真
汚染粉ミルク事件について報道する
『瞭望』(08年第38号=9月22日付)

 言語の違いを埋めるのに優秀な通訳者が不可欠なことと同じく、文化の違いを埋めるには、日中の異文化に精通し、ギャップを埋める術を知っている輸入業者や現地日系企業が欠かせない。重大事件にからんだ日本企業は、日中異文化ギャップに気づかず、ギャップを埋めることなど考えてもいなかったに相違ない。
 “時代差”をはじめとする日中間の異文化ギャップは、今後も存在し続ける。原因がそこにあるのに、問題を中国のせいにして済むのか? そのような安易な対応であれば、食品の事故や事件はこれからも起こる。
 国際貿易では、「相手が契約を守らなかった」は、言い訳でしかない。“契約を守る能力のある相手と、期待通りに商品が仕上がるべく手立てを講じて、ビジネスをする”のが、異文化を股にかけて商売をする国際企業のあり方だ。
 われわれは、中国を問題にするよりも、日本側の輸入業者や現地日系企業の異文化経営能力を問題にすべきだったのではないか。

 

イメージ重ね合う交流が大切

グラフ
 

 今世紀に入って、日中双方でそれぞれ嫌中・嫌日気分が広がった。中国食品の重大事件が日本ではこれに拍車をかけた。日中友好を願う人たちには逆境だ。
 しかし、実は、相手国の人と一度も接触したことのない人が嫌中者や嫌日者のほとんどだ。お互いにフィルターを通すことのない情報が圧倒的に増えれば、お互いを等身大の姿で見ることが可能となろう。嫌中や嫌日は、お互いを知ることで解消する。
 交流の広がりと深化によって、お互いに親しい相手の顔に近しく相手の国のイメージを重ねるようになれば、日中の友好関係は盤石となる。それには、地道な努力が大切だ。
  (中国・経営コンサルタント)

[一覧に戻る]