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日中友好新聞

2008年1月25日号1面
平和の願いを絵本に込めて
日中韓の絵本作家が協力・制作へ

 

写真活発な意見が展開された編集会議(左側は中国、右側は韓国の各絵本作家)

 子どもたちへ反戦の願いと平和の大切さを考えてもらおうと、日本、中国、韓国の絵本作家たちが協力して絵本を作る計画を進めています。
 昨年11月には中国南京市内で編集会議を開催。日本からは第一線で活躍している田島征三さんら4人の絵本作家と絵本の出版を手がける童心社が参加。韓国、中国の絵本作家と出版社も出席し、具体的な話し合いが行われました。絵本の制作にかける熱い思いを南京から帰国した日本の作家たちに聞きました。

発端はイラク戦争

 「日中韓 平和絵本」を作ろうと思いたったのは、『世界中のこどもたちが103』(講談社2004年出版)を中心となって制作したことがきっかけと田島征三さんは語ります。『世界中のこどもたちが』(新沢としひこ作詞、中川ひろたか作曲)の歌をモチーフに、103人の絵本作家たちが世界中の平和を願い絵本を制作。収益はすべてユニセフに寄付され、注目を集めました。
 「発端はイラク戦争。アメリカが始めた戦争に日本が自衛隊を派遣したことに対して反対し、平和を願うだけでなくアクションをおこそうと。イラクの子どもたちの現状を考えて作りました」と、当時を振り返ります。
 「今度は『世界中のこどもたちが103』よりも、もっとしっかりと平和について考えた絵本を中国や韓国の作家たちと作りたい」と決意。
 05年秋、絵本作家の田畑精一さん、和歌山静子さん、浜田桂子さんとの連名で、中国へメッセージを送り、翌年に韓国の絵本作家たちへ呼びかけました。
 〈子どもたちにとって最も大切なこと。それは同時代を生きる他の国の人たちと仲良くし豊かな信頼関係を築くことです。そして戦争のない平和な世界を作ることです。もし、中国、韓国、日本の絵本作家が連帯し、心をひとつにして1冊の絵本を作ることができたら、意義は大変大きいのではないでしょうか。絵本は子どもの心に直接働きかけられる媒体ですから…〉
 中国の周翔(ヂョウシァン)さんら5人と韓国のチョン・スンガクさんら4人が賛同、2年後、南京市内で本格的な合同編集会議が実現したものです。

意義深く歴史的な会議

 編集会議には日本の4人の絵本作家はじめ、中国から周翔(ヂョウシァン)、蔡皋(ツァイガオ)と蕭子(シァオアオヅ)(親子で制作)、姚紅(ヤオホン)、岑龍(ツェンロン)の各氏、韓国からチョン・スンガク、クォン・ユンドク、イ・オクベ、キム・ファンヨンの各氏、3カ国の出版者も合わせて18人が出席し、11月5日から7日まで3日間、絵本の方向性について検討しました。
 日本、韓国、中国の順に持ち寄った企画書やラフを提示、コンピューターや白板を使って、視覚的に分かるよう工夫されたプレゼンテーションを2日間かけて行ない、子どもたちに戦争と平和をどう伝えるか、内容や構成などについて通訳を交え真剣な話し合いが朝から晩まで続きました。
 提出された企画書のなかには「従軍慰安婦」をテーマにしたものや、侵略戦争を描いた話などさまざま。どれも好評だったといいます。
 最終日のまとめでは、3カ国の絵本作家全員が基本的には1人1冊、合計12冊の絵本を出版することで合意。今後は各国の出版社が連絡を取り合い、次回の打ち合わせの日程など設定していく予定。会議に参加した童心社の池田陽一編集長は「3カ国で集まるのは意義深く歴史的。未来に向かって子どもたちに平和を考えてくれれば…」と語ります。

身近な生活から平和を考える

 子どもたちの身近な生活から「平和ってどういうこと?」をテーマに構成を検討している浜田桂子さんは、「戦争の記録も大事。でも悲惨なことばかり描かれた絵本は子どもたちに受け入れられにくい」と、平和を伝える難しさを語ります。
 和歌山静子さんは「加害者の国の人間として、日本がアジアにしてきた悲惨な戦争を、子どもたちに知らせることが未来につながると思う。身近にある『靴』で日本の軍隊を表現し、アジアの人びとを踏みつけた事実を表現したい。小さな子どもの『靴』が、ほかの国の人びとを踏みつける『踏み手』にならないよう、しっかり伝えたい」といいます。
 田畑精一さんは「桜をタイトルにした絵本を計画中。美しい桜が、軍歌などで『桜のように潔く死ね』『散れ散れ 死ね死ね』と多用され、戦争に取り込まれていく悲しい姿と、自分の戦争体験を重ね合わせて描こうと思っています」と、意気込みを語りました。(押)

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