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日中友好新聞

2007年5月5日号1面

日中関係の「氷解」めざす
温家宝中国首相、来日で国会演説

 中国の温家宝首相が4月11日から13日まで来日。今回の日本訪問を「氷を溶かす旅」と位置づけ、国会での演説をはじめ、多方面で交流活動を行いました。中国首相の来日は、2000年の朱鎔基氏以来6年ぶりです。昨年10月の安倍首相の訪中以来、雪解けムードの広がる日中関係。「国会演説」の内容から、今回の温首相訪日の成果と今後の課題を考えます。
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 反省と約束、「実際の行動」で

 温首相は4月12日の国会演説で、稲作などの生産技術の日本伝来、阿部仲麻呂ら遣唐使の派遣、日本への仏教普及に尽力した鑑真和上や孫文と日本の関わり、明治維新後の中国留学生の来日などを例にあげ、「中日両国の友好往来の規模と深さは、世界文明の歴史に類を見ない」と述べました。
 一方、近代の不幸な50年、とくに15年に及ぶ日本の中国侵略戦争で中国国民が受けたおびただしい惨渦と日本国民の犠牲は、「ごく少数の軍国主義者が責任を負うべきである」とし、戦争孤児だった栫(かこい)美穂子さん(協会都城支部会員)を救出した聶栄臻(じょうえいしん)将軍の英断が中国国民の大きな感動を呼んだエピソード(別掲)や、日本敗戦後の在華邦人引き揚げに中国が払った努力、「残留日本人孤児」を育てた養父母の慈愛などの例をあげて、両国民の友好、連帯の大切さを説きました。
 国交正常化以来、日本政府が表明してきた「反省とおわび」を評価したうえで、温首相は「態度表明と約束を実際の行動で示されることを心から希望する」と強調しました。

 平和共存の具体的方向示す

 演説の最後に、温首相は「今後の平和的日中関係」を、両国政府が合意し約束した日中共同声明(1972年)、日中平和友好条約(1978年)、日中共同宣言(1998年)の3つの文書の原則・精神を順守することを基本に、「戦略的互恵関係」(政治・経済・文化・安全保障・国際問題にわたる互恵関係の具体化)に置くことを提起。相互信頼、約束の履行、大局を重視し、小異を残し大同につくこと、平和互恵、共同発展をめざすこと、未来に目を向けた交流の強化、協議を密接に行うことなどの提言を行いました。
 前日の11日には、これらの内容を盛り込んだ「日中共同プレス発表」が行われ、今後の日中関係発展の構想と具体的な政府レベルの交流計画が示されました。

アジアの「平和と発展」重視を
伊藤敬一会長が談話

 日本中国友好協会の伊藤敬一会長は4月12日、温家宝首相の来日について次の談話を明らかにしました。
 温家宝首相が来日し、友好交流促進のために尽力されたことを心から歓迎します。温首相の国会演説などのなかで、重要なことは次の点です。
 第1は、日本政府の侵略戦争反省を、「言葉だけでなく実際の行動で示すこと」を強調したこと。このなかには、歴史認識問題を真剣に反省し、靖国神社参拝をしないこと、「従軍慰安婦」問題など侵略戦争の事実を認めること、中国人戦争犠牲者や「残留日本人孤児」に謝罪と補償をするなど、戦後処理に真剣に取り組むよう促していると考えます。
 今回は日本の政財界を挙げての歓迎ぶりでしたが、この態度を実際の行動で示すことこそ、温首相が述べた「相互信頼」につながると思います。
 第2は、温首相が「中国は平和的発展の道を進む」と明言し、「北東アジアの平和と安定を維持し、東アジアの地域協力を推進し、アジア振興に取り組む」と述べましたが、日本政府はこれに真剣に応えるべきです。
  温首相の演説のほぼ同じ時に、「在日米軍再編促進法案」を強行採決し、アメリカの世界戦略従属を強め、国民投票法案をむりやり押し通し、「憲法改正」を進めるなどの方向は、平和と協調、発展を望む東アジアや世界の潮流に逆行し、中国の提起にも反するものです。
 温首相は「中日両国はいずれもアジアと世界における重要な国。中日関係のあり方は、地域ひいては全世界に影響を及ぼす」と述べましたが、日本政府はこの言葉を肝に銘じて欲しいと思います。
 温首相の来日は、「中国脅威論」を薄め、国民レベルの友好促進にも貢献したと考えます。協会は、日中関係の「真の氷解」のために努力することを明らかにするものです。


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